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宮崎家庭裁判所日南支部 昭和43年(家イ)40号 審判 1968年6月28日

申立人 串田マサ子(仮名)

相手方 福丸康夫(仮名)

主文

相手方は別紙目録記載の物件について、譲渡、質権、抵当権、賃借権の設定、その他一切の処分をしてはならない。

理由

申立人と相手方との間の当庁昭和四三年(家イ)第九号夫婦関係調整調停事件において、双方間の離婚、親権者指定の調停が成立し、その際、財産分与等財産上の問題については別途に協議する旨合意ができたことにもとづき、申立人から相手方に対してなされたのが本件申立事件であるところ、上記調停事件当時より申立人およびその親族と相手方の親族との対立がはげしく、しかも相手方自身は知能的に非常に劣るところがあり、その親族の言に従いやすい傾向がうかがわれる反面、別紙目録記載の物件は申立人が相手方と婚姻して以来双方の努力によつて獲得したものであるとの申立人の主張もあるところから、本件につき終局審判をなすまでの間、相手方所有名義にかかる別紙目録記載の物件につきその処分を禁止する必要がある。

ところで、本事件は家事審判法上いわゆる乙類事件であり、この種事件は調停が成立しなかつた場合は当然に審判に移行し、かつ調停の申立時に審判の申立があつたものとみなされるのであるから(同法二六条一項)、この種事件の性質上それが調停手続係属中においても審判前の保全処分を命じ得るものと解すべきである。

そこで、本事件について家事審判規則五六条の二により審判前の保全処分を命ずべきところ、このいわゆる審判前の仮の処分については執行力の有無ないしは不動産についての執行方法について解釈上争いのあるところであるけれども(とくに昭和二五年七月二〇日法務省民事局長回答)、判例上家事審判事件を本案とする民訴法上の保全処分はできないことが確立されていることおよび学説上も審判前の仮の処分には執行力があると解する見解が近時有力になつていること等を考慮すると、審判前の仮の処分には執行力を認めるのが正当な解釈というべく、さらに本件のごとき不動産の仮の処分については準用条文の有無にかかわらず民訴法七五一条所定の方法によつて執行すべきものと解すべきである(ちなみに家事審判規則七四条にもとづく親権者の職務執行停止、代行者選任の仮の処分については昭和二三年七月一日法務省民事局長回答によつて戸籍実務上受理記載がなされているのである)。

以上の理由から家事審判規則五六条の二により主文のとおり審判する。

(家事審判官 渡瀬勲)

事件の概要

妻から夫に対し昭和四三年(家イ)第九号夫婦関係調整事件が申立てられたが、相手方は知能が劣るうえに(そのため輔佐人を選任した)双方の親族間の対立が激しく、毎調停期日に必す双方の親族がそれそれ六、七名出頭し、その必要のないことを指示してもききいれないほどの対立状態で、夫婦間だけで問題の処理をすることが至難と認められたので、双方間に争いのない離婚と親権者指定だけを分離して調停を成立させ、財産分与等財産上の問題は別途に処理することとし、右調停成立日に直ちに妻より昭和四三年(家イ)第四〇号財産分与事件を申立てさせ、事前に用意しておいた資料にもとづき別紙(一)のとおり審判前の仮の処分をなし、即刻相手方たる夫および右輔佐人に面前告知し、ついで不動産についての右仮の処分の執行として別紙(二)のとおり登記嘱託をなしたが、別紙(三)のとおり登記官より却下決定がなされたものである。

その後判明した夫所有の財産についても、さらに別紙の(四)とおり追加の仮処分審判をした。

事件は申立に応じて調停をなしたが、右のような事情で調停成立はむずかしく二回だけの期日で調停不成立とし、目下参与員をつけて審判手続進行中である。

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